ラインホルト・メスナーの映画「ヒマラヤ運命の山」を見てきました。この映画、純粋に山岳映画でとても正確でした。ウッドシャフトのピッケル一本とウールのミトンで急な雪の壁をノーザイルで登っていく技術の高さにびっくりします。
メスナーは当時批判もありましたが私にとってはとてつもない超人。8000m峰を14座全部無酸素で世界で初めて登った人です。未だにこの人を越えるインパクトのある登山をした人はいないと思います。しかも今生きている。この人が執拗に拘った無酸素アルパインスタイル/単独登攀のすべては、1970年弟を亡くしたナンガパルバットから始まったんですね。
映画で描かれたストーリーは、亡くなった弟、そして最後の目撃者であり自分たちを助けもせずに登頂を優先した二人が今この世にはいませんから、事実の検証はしようがありません。後述の二人の内一人はその後モンブランで亡くなり、一人は自殺だそうです。映画シーンからこの二人に関しては裏切りという忘れたくても忘れられない感情があるのかもしれません。
生き延びる力があったからこそ、メスナーは栄冠を手にしたのでしょう。何があっても最後まで生きなきゃいけない、そんなことを山を通じて教えてくれるのではないでしょうか。
映画の中で、メスナーが助け出され弟ギュンターが死んだ後、母親が、教会で凍傷の息子の手を握っているシーンがとても印象的でした。わたしが学生時代、くだらないミスで事故を起こして救出されたとき、今は亡き母親がわたしの手を握っていたことを思い出します。母もなぜかメスナーを知っていて、14座登った後に出版された写真集を送ってくれました。
冒険的な山が好きな人には絶対に見てほしい映画です。
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